ジギタリス

令和元年5月、新元号に代わり、いかが過ごされましたでしょうか。新緑の候、5~6月に最盛期を迎えたジギタリスが花を咲かせました。2年ぶりの開花に興奮してます。

ジギタリスは別名キツネノテブクロと言い、筆者の幼少期を過ごした近くの森林に野生化していたのを記憶しております。

二年草または多年草の草本、学名はDigitalis L. ラテン語で指を表すdigitusに由来します。これは花の形が指サックに似ているためです。写真は花の模様からダルメシアンと名付けられた観賞用品種Digitalis purpurea(紫)種になります。

ジギタリス全草に猛毒があり取り扱いには注意が必要です。18世紀後半から心不全、神経疾患に用いられた時期があるそうです。ジギタリス中毒として胃腸障害の嘔吐、下痢、不整脈や動悸などの循環器症状、頭痛、めまいなどの神経障害、視野が黄色く映る症状(黄視症;ゴッホの作品に黄色が多用されているのはジギタリスの副作用と主張する学者もいるようです)があります。

昭和40年代には健康食品ブームとなったコンフリーと若葉が似ているため誤食され、死亡事故もあったそうです。しかしコンフリーは過剰摂取による肝障害が指摘され摂食しないよう厚生労働省から注意勧告がでています。平成16年6月18日に販売禁止になってます。中毒対策としては、栽培は食用植物とは隔離するなどの注意が必要です。

毒性成分はジギトキシン、ギトキシン、ジゴキシン、ラナトシドCなどの強心配糖体。慢性心不全の予防や治療に使用されるジゴキシンはジギタリスに含まれず、同属植物のケジギタリスに含まれます。現在は化学的に合成されていますが、近年は使用が減っており、第14改正日本薬局方第二追補からジギタリス、ジギタリス末が削除となってます。

自然界の法則なのか、美しいものには毒があるものが多く感じられます。毒にも薬にもなる、古代からの知恵の継承と植物界に創薬チャンスを人間は見出せるかに期待は高まりますね。


参考文献

・自然毒のリスクプロファイル:高等植物:ジギタリス 厚生労働省

・診療のヒント100:循環器最新情報 公益財団法人 日本心臓財団

・育て方がわかる植物図鑑:ジギタリス みんなの趣味の園芸 NHK出版